ボルン近似とは?
ぼるんきんじ
ボルン近似とは、量子力学における散乱問題を解く際に、散乱ポテンシャルが弱い場合に適用できる一次摂動論的な近似手法のことです。
ボルン近似は、マックス・ボルンが1926年に提案した量子散乱理論における重要な近似手法です。原子や分子、原子核などに粒子(電子・中性子・光子など)が衝突する散乱現象を計算する際に広く用いられています。
基本的な考え方として、粒子の波動関数は「入射波+散乱波」の重ね合わせで表せます。散乱はリップマン・シュウィンガー方程式という積分方程式で厳密に記述されますが、一般にこれを解くのは困難です。ボルン近似では、散乱ポテンシャルが入射粒子のエネルギーに比べて十分小さいと仮定し、散乱波を入射波だけで計算する一次近似を採用します。
得られる量は散乱振幅と微分散乱断面積で、これらは実験で観測できる散乱粒子の角度分布と直接対応します。ボルン近似の結果、散乱振幅はポテンシャルのフーリエ変換に比例することが示され、計算が大幅に簡単になります。
適用条件と限界について注意が必要です。
- 高エネルギー散乱(粒子エネルギーがポテンシャルより十分大きい)に有効
- 低エネルギーや強いポテンシャルでは精度が落ちる
- 共鳴散乱など特殊な状況では使えない
- より精度が必要な場合は「ボルン系列」の高次項やその他の手法を用いる
ボルン近似は原子物理、核物理、固体物理における電子回折・中性子回折の解析など、現代物理学の広い分野で不可欠な計算ツールとなっています。
使い方・例文
電子線回折実験で原子の散乱因子を求める際や、中性子散乱によって物質の構造を調べる研究において、ボルン近似を用いた理論計算と実験データの比較が行われます。
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