SLS(スペース・ローンチ・システム)とは?NASAの超大型ロケット
公開 2026年8月20日
アルテミス計画とSLSの役割
SLS(スペース・ローンチ・システム)は、NASAが推進する有人月探査計画「アルテミス」を支えるために開発された超大型ロケットである。かつてアポロ計画で人類を月へ送ったサターンVロケットの退役以降、アメリカには月へ人と大型機材を送り届けられる打上げ機が存在しなかった。この空白を埋めるべく、スペースシャトル計画で培われた技術を土台に開発が進められたのがSLSである。
機体構成と打上げ能力
SLSは、スペースシャトルで使われていた主エンジンRS-25を4基束ねたコアステージと、両脇に取り付けられた2本の固体ロケットブースターで構成される。基本型であるブロック1型でも月周辺の軌道へ約27トンの重量を送り込む能力を持ち、これは従来のロケットを大きく上回る。今後、上段エンジンを強化したブロック1B、ブロック2といった発展型の開発も計画されている。
初打上げアルテミス1号の成果
2022年11月、SLSは無人の有人宇宙船オリオンを搭載してアルテミス1号ミッションで初めて打ち上げられた。オリオンは月を周回して地球に帰還し、機体の耐熱性能や飛行性能が確認された。この成功により、アルテミス計画は次段階である有人月周回飛行、さらには人類の月面再着陸へと進む足がかりを得た。
課題と今後
SLSは非常に高い打上げ能力を持つ一方、機体を使い捨てにする設計のため1回あたりの打上げコストが極めて高いことが課題として指摘されている。民間企業が開発する再使用型ロケットとのコスト競争も注目される中、NASAはSLSをアルテミス計画の中核として位置づけつつ、有人月面着陸や将来の火星探査に向けた運用を続けていく方針を示している。
アルテミス計画全体における位置づけ
アルテミス計画では、SLSで打ち上げられたオリオン宇宙船が月周回軌道上で民間開発の月着陸船とドッキングし、宇宙飛行士を月面へ送り届ける手順が想定されている。SLSはこの一連の計画の出発点を担う存在であり、今後予定されている有人月周回ミッションや月面着陸ミッションの成否は、SLSの安定した打上げ実績にも大きく左右される。
さらに将来的には、火星有人探査を見据えた大型機材の打上げにもSLSの発展型が活用される構想があり、月探査にとどまらない役割が期待されている。高コストという課題を抱えつつも、現時点で人と大型機材を月へ確実に送り届けられる打上げ能力を持つ数少ないロケットとして、アルテミス計画の成否を左右する重要な存在であり続けている。
国際協力との関わり
アルテミス計画には、日本を含む複数の国と機関が参加しており、SLSによって打ち上げられるオリオン宇宙船には欧州が開発したサービスモジュールも搭載されている。SLSは単にアメリカ一国の技術力の結晶であるだけでなく、国際的な有人月探査の枠組みを支える重要な基盤としての役割も担っている。今後の各国の協力体制の広がりによって、SLSの重要性はさらに増していくと見込まれている。