あかつきとは?失敗から復活したJAXAの金星探査機の軌跡を解説
公開 2026年8月20日
打ち上げと最初の失敗
あかつきは、JAXAが2010年5月に打ち上げた金星気候軌道機である。金星の分厚い大気の動きを長期間観測することを目的として開発された。同年12月、金星に到達したあかつきはメインエンジンを噴射して軌道投入を試みたが、燃料と酸化剤を送る配管の弁に異常が生じてエンジンが破損し、軌道投入に失敗してしまった。金星をかすめて太陽を周回する軌道に入ったあかつきは、そのまま行方を絶つかにも見えた。
5年越しの再挑戦
運用チームはあきらめず、限られた性能しか残っていない小型の姿勢制御用スラスターを使って軌道を修正する計画を立てた。約5年間、太陽の周りを回りながら機体の状態を維持し続け、2015年12月、再び金星に接近したタイミングでスラスターを噴射する再投入運用に挑んだ。この試みは成功し、あかつきは予定より扁平な軌道ながら金星を周回する探査機となった。日本の惑星探査史上、失敗からの復活として大きな注目を集めた出来事である。
観測でわかったこと
あかつきは紫外線・可視光・赤外線など複数の波長のカメラを使い分け、金星の雲の動きを継続的に撮影している。得られた画像から、金星の大気が惑星の自転速度の60倍以上という猛烈な速さで西から東へ流れる「スーパーローテーション」という現象の詳細が明らかになってきた。また、雲の中に弓状に伸びる巨大な模様が発見されるなど、地形の影響を受けた大気波動の存在も確認されている。
探査の意義
地球によく似た大きさを持ちながら、灼熱で高圧の大気に覆われた金星は「地球の双子星」とも呼ばれる。あかつきによる長期観測は、金星がなぜ地球と異なる環境になったのかを解明する手がかりとなり、他の惑星の気候形成メカニズムを理解する上でも重要な知見を提供し続けている。
運用チームの工夫と教訓
予定と異なる扁平な軌道になったことで、金星に近づく距離や観測できる時間帯も当初計画から変化したが、運用チームは観測計画を柔軟に組み直すことで対応した。限られた燃料と機器の状態を見極めながら長期運用を続けるノウハウは、その後の日本の惑星探査計画にも大きな教訓として引き継がれている。一度の失敗をあきらめずに克服したあかつきの経験は、宇宙開発における粘り強い運用の重要性を示す代表例として語り継がれている。
また、あかつきの観測は金星探査にとどまらず、地球の気候変動を理解するための比較対象としても重要な意味を持つ。似た成り立ちを持ちながら大きく異なる進化をたどった二つの惑星を比較することで、大気の暴走的な温室効果がどのような条件で起こりうるのかを考える手がかりも得られている。
あかつきの運用は当初の予定を大きく超えて継続されており、長期間にわたる金星大気の観測データは、短期的な現象だけでなく季節や年単位の変化を捉える上でも貴重な資料となっている。今後も観測を継続することで、金星気象学のさらなる進展が期待されている。