イクター制とは?
いくたーせい
イクター制とは、イスラーム世界で中世に広まった土地・徴税権の給与制度で、支配者が軍人や官僚に対して軍役などの見返りとして特定地域の徴税権を与えるものです。
イクター制とは、イスラーム世界において発達した土地・徴税権の給与制度です。「イクター(iqta')」とはアラビア語で「分割して与えられたもの」を意味し、支配者(スルタンや君主)が軍人・官僚・有力者に対して、特定地域からの税収を徴収する権利を与える仕組みです。
この制度は9〜10世紀のアッバース朝カリフ国で萌芽し、セルジューク朝(11〜12世紀)のもとで体系的に整備・普及しました。イクターを与えられた者(イクター保有者)はその収入で兵士を養い、徴兵義務を果たす代わりに行政や防衛を担いました。
イクター制の主な特徴は以下のとおりです。
- 原則として土地の私的所有権は付与されず、徴税権のみが与えられた。
- 保有者の死後や罷免後は原則として君主に返還される仕組みであった。
- ただし実際には世襲化・私有化が進み、地方分権の一因ともなった。
- 西欧封建制のレーエン(封土)制度と類似点を持つが、法的性格は異なる。
イクター制は中東・中央アジア・インドのイスラーム王朝に広まり、デリー・スルタン朝などでも採用されました。軍事力の維持と中央集権の両立を図る制度として機能しましたが、徴税権の世襲化が進むと中央支配力の弱体化につながる課題も生じました。
使い方・例文
世界史の学習では、セルジューク朝の統治機構を説明する際にイクター制が取り上げられ、中世イスラーム国家の軍事・財政制度を理解するうえで重要な概念として登場します。
この用語をシェア
最終更新: