スピン遷移とは?
すぴんせんい
スピン遷移とは、遷移金属錯体において温度・圧力・光などの外部刺激により電子のスピン状態が高スピンと低スピン間で切り替わる現象です。
スピン遷移(スピンクロスオーバーとも呼ばれる)は、主に鉄(II)・鉄(III)・コバルト(II)などの遷移金属イオンを含む錯体化合物において観測される現象です。温度・圧力・光照射・溶媒などの外部刺激によって、金属イオンの電子配置が高スピン状態(HS: high spin)と低スピン状態(LS: low spin)の間で可逆的に変化します。
この現象の背景には結晶場理論があります。遷移金属イオンのd軌道は配位子場の影響を受けてエネルギー的に分裂しており、分裂の大きさ(結晶場分裂エネルギー)と電子のスピン対形成エネルギーのバランスによって、電子がどちらの状態を取るかが決まります。温度変化などによってこのバランスが変化すると、スピン状態の転換が起こります。
スピン遷移の特徴と応用として以下が挙げられます。
- 磁性・色・体積などの物性が劇的に変化する
- ヒステリシス(履歴現象)を示す材料は記憶素子への応用が期待される
- 分子スイッチ・センサー・データストレージへの応用研究が進む
- 光誘起スピン遷移(LIESST効果)を利用した光スイッチング材料
スピン遷移化合物は分子機能材料として注目を集めており、次世代のナノサイズ情報素子の実現に向けた基礎研究が世界各地で進められています。
使い方・例文
材料化学・錯体化学の研究分野で論文に登場することが多く、温度に応じて色が変わる「スマート材料」の原理として紹介されることもあります。
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