溌墨とは?
はつぼく
溌墨とは、筆や墨を勢いよく画面に打ちつけたり流したりして、偶然性を生かした大胆な墨の表現を行う中国・日本の水墨画の技法です。
溌墨(はつぼく)は、中国語では「泼墨」と書き、水墨画における特殊な技法のひとつです。筆に含ませた墨をキャンバスや紙に打ちつけたり、勢いよく流したりすることで生まれる、偶発的で豪快な墨の広がりを絵画表現として活用する手法を指します。
溌墨の起源は中国・唐代(7〜10世紀)にまで遡るとされます。唐の王洽(おうこう)という画家が、酒に酔った状態で墨を紙に打ちつけ、そこに生じた形を山水画に仕上げたという伝説が残っており、溌墨の起源のひとつとして語られています。
溌墨の技法的な特徴には以下があります。
- 墨の濃淡や広がりを細かく制御するのではなく、勢いと偶然性を重視する
- 大きな筆や刷毛を用いて一気に墨を置く大胆さが求められる
- 滲み(にじみ)や掠れ(かすれ)が自然に生まれ、それが表現の一部となる
- 山・岩・樹木などの形が、偶発的な墨の形から見出される
日本には禅宗とともに水墨画の文化が伝わり、溌墨の技法も受容されました。江戸時代の長沢芦雪(ながさわろせつ)など、大胆な筆法を用いた画家の作品にその影響が見られます。現代の墨象(ぼくしょう)やアート書道にも通じる、自由で表現主義的な精神を持つ技法として評価されています。
使い方・例文
水墨画の制作において、溌墨を使うと墨が広がって生まれた形を活かして山水の風景を描くことができ、計算された筆跡とは異なる生き生きとした偶然の美が生まれます。
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