道徳的離脱とは?
どうとくてきりだつ
道徳的離脱とは、人が自らの行動を正当化する心理機制により、本来感じるはずの罪悪感や道徳的抑制を一時的に無効化してしまう現象です。
道徳的離脱(moral disengagement)は、社会的学習理論で知られる心理学者アルバート・バンデューラが提唱した概念です。人は通常、自分の行動が他者を傷つけると判断したとき、罪悪感や自責の念を覚えます。ところが、特定の認知的操作を行うことで、この道徳的自己規制のはたらきを切り離し(離脱させ)、有害な行動を問題なく実行できる状態になることがあります。
バンデューラは道徳的離脱が起こるメカニズムを複数特定しています。主なものとして以下が挙げられます。
- 道徳的正当化:より大きな善のためだと行動を聖戦化する
- 責任の分散と置き換え:上司や組織の命令に従っただけと責任を他者に帰属させる
- 被害の最小化:「たいしたことではない」と被害を軽視する
- 被害者の非人間化:相手を人として扱わないことで罪悪感を消す
- 責任の拡散:集団行動にすることで個人の責任感を薄める
道徳的離脱は、企業不正・いじめ・戦時中の残虐行為など、さまざまな文脈で観察されています。普段は倫理観の高い人でも、状況次第でこのメカニズムが作動しうる点が重要で、個人の「悪意」だけで説明できない集団的悪行の理解に役立ちます。組織内での不正防止や道徳教育において、この概念への理解が応用されています。
使い方・例文
職場で部下が上司の指示に従い不正なデータを改ざんする場合、「命令されただけで自分は悪くない」という責任の置き換えが道徳的離脱の典型例です。
この用語をシェア
最終更新: