唯識思想とは?
ゆいしきしそう
唯識思想とは、「あらゆる存在はただ識(こころ)のはたらきにすぎない」と説く仏教哲学の一派で、心の深層構造を精緻に分析した思想体系です。
唯識思想(ゆいしきしそう)は、大乗仏教の哲学的潮流の一つで、「唯識(vijñaptimātratā)」すなわち「ただ識(意識・認識)のみが存在する」という根本命題を中心に展開します。外界の物や現象は実在するのではなく、私たちの心(識)が生み出した表象にすぎないと考える点が特徴です。
唯識思想は4〜5世紀ごろのインドで、無着(アサンガ)と世親(ヴァスバンドゥ)の兄弟によって体系化されました。その後、護法・玄奘(三蔵法師)らによって中国に伝えられ、日本には奈良時代に法相宗(ほっそうしゅう)として伝来し、興福寺や法隆寺などで学ばれました。
唯識思想が独自に分析した「識」の構造には次のものがあります。
- 眼・耳・鼻・舌・身識:五感に対応する5つの識
- 意識(第六識):思考・概念・判断を司る識
- 末那識(まなしき・第七識):自我執着の根源となる深層の識
- 阿頼耶識(あらやしき・第八識):あらゆる経験・業の「種子(しゅうじ)」を蓄える最深層の識
特に阿頼耶識は、過去の行為(業)の印象(種子)を保存し、それが縁に触れると現行(現象)として現れるという仕組みを説明します。これは現代の潜在意識や記憶の概念とも比較されることがあります。唯識思想は存在の本質を心の構造から解明しようとした精緻な哲学として、現代の仏教学・認知科学・哲学の分野でも注目されています。
使い方・例文
仏教哲学の講義で「私たちが見ている世界は実は識が作り出した表象にすぎない」という唯識思想の命題が紹介された。法相宗の寺院で唯識の経典を学ぶ僧侶は、心の深層構造を分析することで執着から離れることを目指す。
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