三酸化ヒ素とは?
さんさんかひそ
三酸化ヒ素とは、ヒ素の代表的な酸化物で、古くから毒物として知られる一方、近年は血液がんの治療薬としても用いられる化合物です。
三酸化ヒ素(化学式 As2O3、ヒ素の三酸化物)は、ヒ素と酸素から成る無機化合物で、白色の粉末または固体として存在します。古来より「砒霜(ひそう)」「白ヒ素」とも呼ばれ、無味無臭に近いことから歴史上しばしば暗殺や毒殺に使われてきた経緯があります。
毒性の観点では、細胞のミトコンドリア機能を阻害してATP産生を妨げ、酵素のチオール基とも反応するため、摂取すると消化器症状・神経障害・多臓器不全を引き起こします。急性毒性・慢性毒性ともに強く、かつては殺鼠剤・農薬・防腐剤などに利用されていましたが、現在は多くの用途で使用が禁止または厳しく制限されています。
一方、20世紀末以降の研究により、三酸化ヒ素ががん治療に応用できることが明らかになりました。特に急性前骨髄球性白血病(APL)に対しては、低濃度のヒ素が異常細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導し、分化を促進することが確認されています。現在では「トリセノックス」などの商品名で医薬品として承認されており、再発・難治性APLの標準治療薬のひとつとなっています。
このように三酸化ヒ素は「毒にも薬にもなる物質」の典型例であり、用量・投与方法・対象疾患によってまったく異なる結果をもたらす化合物です。
使い方・例文
再発した急性前骨髄球性白血病の患者に対して、三酸化ヒ素を点滴投与することでがん細胞を死滅させる治療が現代の血液内科では行われています。
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