時間反転対称性とは?
じかんはんてんたいしょうせい
時間反転対称性とは、物理法則が時間の向きを逆転させても変わらない性質のことで、素粒子物理学や量子力学の基礎をなす対称性の一つです。
時間反転対称性(time reversal symmetry)とは、物理系の運動を記述する法則において、時間変数 t を −t に置き換えても方程式が同じ形を保つ性質を指します。平たくいえば「物理現象を映像に撮り、それを逆再生しても法則に矛盾しない」という性質です。
古典力学のニュートンの運動方程式や、電磁気学のマクスウェル方程式の多くは時間反転対称性を持っています。ボールが放物線を描いて飛ぶ映像を逆再生しても、それは物理的に正当な軌道です。一方、マクロな世界では熱力学の第二法則(エントロピー増大則)によって時間の方向性(時間の矢)が生じ、対称性が事実上破れて見えます。
素粒子物理学では、時間反転対称性(T対称性)はCP対称性と深く関連します。CPT定理によれば、電荷共役(C)・パリティ(P)・時間反転(T)の三つをすべて組み合わせた変換のもとではすべての物理法則が不変とされています。しかし1964年に中性Kメソンの崩壊でCP対称性の破れが発見され、T対称性の破れも示唆されました。その後、BaBarやBelle実験でBメソン系においてT対称性の直接的な破れが確認されています。
この対称性の研究は以下の観点から重要です。
- 宇宙に反物質より物質が多く存在する理由(バリオン非対称性)の解明
- 標準模型を超えた新物理の探索
- 量子コンピューターや量子情報での時間反転操作の設計
時間反転対称性の破れは、宇宙の物質優勢を説明する鍵として今も研究が続けられています。
使い方・例文
素粒子の崩壊実験において「反応を時間逆順にした過程」の確率が元の反応と異なることが観測されており、これが時間反転対称性の破れの直接証拠として挙げられます。
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