ぶっ返りとは?
ぶっかえり
ぶっ返りとは、歌舞伎や日本舞踊で衣裳の上半身部分を一気に脱ぎ落として役柄の変化を表現する、独特の早替わり技法のことです。
ぶっ返りは、歌舞伎・日本舞踊において舞台上で瞬時に衣裳の上半身を脱いで役の変化を見せる演出技法です。正式には「ぶっ返り(打っ返り)」と書き、衣裳の縫い糸をあらかじめ特定箇所だけ仮留めにしておくことで、引き抜きと同様の仕掛けを用いて大きな見栄えを生み出します。
仕組みとしては、衣裳の肩から袖にかけてのぬいしろを糸でゆるく留めておき、演者が演技の流れのなかで腰紐や帯を外すと、上半身がすとんと落ちるように脱げ、裏地として縫い付けられた別の色・柄の衣裳が現れる構造になっています。引き抜きが肩から袖全体を引き抜く技法であるのに対し、ぶっ返りは腰より上の部分のみをひっくり返すように脱ぎ降ろす点が特徴です。
典型的な場面としては、善人から悪人へ、あるいは人間から妖怪・霊へと役柄が豹変する瞬間に用いられます。たとえば荒事の演目や踊りの途中で突然悪の顔が露わになる場面などで観客に強い視覚的インパクトを与えます。衣裳の色も表が抑えた色調で裏が鮮烈な色であることが多く、豹変ぶりを色彩でも強調します。
ぶっ返りは、江戸時代から受け継がれてきた歌舞伎の「見せ場」づくりの知恵であり、衣裳師・着付師・演者の三者が緻密に連携して初めて成立する技法です。舞台の様式美と一瞬の驚きを同時に楽しめる点が、この技法が現代まで愛されている理由といえます。
使い方・例文
荒事の演目で主人公が善人から悪の化身へと変わる瞬間、ぶっ返りによって衣裳が落ち、裏の鮮やかな色柄が現れると客席から大きなどよめきが起きます。
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