否定弁証法とは?
ひていべんしょうほう
否定弁証法とは、テオドール・アドルノが提唱した哲学的思考法で、いかなる概念も同一性に回収されることを拒否し、常に否定を通じて思考し続けることを求める理論です。
否定弁証法は、フランクフルト学派の哲学者テオドール・W・アドルノが1966年の著書『否定弁証法』で展開した批判的思考の方法論です。ヘーゲルの弁証法が「正・反・合」の総合(アウフヘーベン)を通じて矛盾を解消するのに対し、アドルノはその解消そのものを拒否しました。
アドルノが問題にしたのは「同一性思考」です。概念はものごとを一般化・抽象化することで対象の個別性・非同一性を切り捨ててしまいます。この操作は認識における暴力であり、啓蒙が野蛮へと反転する構造(ホルクハイマーとの共著『啓蒙の弁証法』)と深く結びついています。
否定弁証法の核心は以下の点にあります。
- 概念は対象を完全に把握できないという限界を自覚すること
- 肯定的な総合や体系に収束させず、矛盾を矛盾のまま保持すること
- 抵抗として「非同一なもの」の痕跡を思考の中に残すこと
アドルノはこの方法を、ナチズムやホロコーストが示した近代的合理性の破綻への応答として位置づけました。芸術論・文化批判・道徳哲学にわたって展開され、ポスト構造主義や批判理論にも影響を与えています。
使い方・例文
哲学や社会思想の文脈で、ヘーゲル弁証法との比較やフランクフルト学派の思想を説明する際に登場します。また、全体主義批判や現代社会の同一化圧力を論じる際にも引用されます。
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