MITRE ATT&CKとは?サイバー攻撃の手法を体系化したフレームワーク
公開 2026年8月22日
MITRE ATT&CKとは
MITRE ATT&CKとは、アメリカの非営利研究機関MITRE社が公開している、サイバー攻撃者の攻撃手法(テクニック)や戦術(タクティクス)を体系的に整理したナレッジベースです。名称は「Adversarial Tactics, Techniques, and Common Knowledge」の略で、実際に世界各地で観測された攻撃事例をもとに作られている点が大きな特徴です。理論上の脅威ではなく、現実に確認された攻撃者の行動パターンを土台にしているため、セキュリティの現場で高い信頼を得ています。
戦術とテクニックの構造
ATT&CKは、攻撃の流れを「偵察」「初期侵入」「実行」「権限昇格」「防御回避」「認証情報アクセス」「内部活動」「情報収集」「持ち出し」「痕跡消去」といった段階(戦術)に分け、それぞれの段階で攻撃者が実際に用いる具体的な手口(テクニック)を紐づけて整理しています。ひとつの戦術に対して複数のテクニックが存在し、さらにテクニックの下位区分であるサブテクニックまで細かく分類されているため、攻撃の全体像を段階ごとに把握できるようになっています。
企業での活用方法
企業や組織はATT&CKを参照することで、自社のセキュリティ対策がどの攻撃手法に対応できているかを客観的に評価できます。具体的には、導入している検知・防御製品がどのテクニックをカバーしているかをマッピングし、対応できていない領域を洗い出す「ギャップ分析」に用いられます。また、インシデント対応の際に発生した事象を共通の用語で記録・報告できるため、組織内外での情報共有や、セキュリティ製品同士の比較検討における共通言語としても広く活用されています。
対象領域ごとのマトリクス
ATT&CKは企業のIT環境向けのマトリクスだけでなく、クラウド環境、産業制御システム(ICS)、モバイル端末など、対象領域ごとに専用のマトリクスも用意されています。これにより、業種やシステムの特性に応じた攻撃手法の分類・分析が可能になっており、幅広い分野のセキュリティ担当者が自分たちの環境に合わせて活用できる構成になっています。
演習や教育への応用
近年ではATT&CKを土台にしたレッドチーム演習(実際の攻撃者の視点で自社を疑似攻撃し弱点を洗い出す訓練)や、セキュリティ人材の教育プログラムにも活用が広がっています。攻撃者の視点を体系的に学べる教材として、セキュリティ製品の評価基準策定や社内研修の場でも参照されることが多く、サイバーセキュリティの国際的な共通基盤としての役割を担っています。
国際的な普及
ATT&CKは特定の国や企業に限定されたものではなく、世界中のセキュリティベンダーや政府機関、研究者コミュニティによって参照される事実上の標準となっています。日本国内でも、セキュリティ製品の説明資料やインシデントレポートの中でATT&CKのテクニックIDが引用されることが一般的になりつつあり、組織間で攻撃情報を共有する際の共通言語としての役割がますます重要になっています。