擬似遺伝子とは?
ぎじいでんし
擬似遺伝子とは、かつて機能していた遺伝子がゲノム中に痕跡として残ったが、突然変異の蓄積によってタンパク質を作る機能を失った配列のことです。
擬似遺伝子(Pseudogene)とは、構造的に遺伝子と似た塩基配列をゲノム中にもちながらも、終止コドンの早期出現、フレームシフト、プロモーターの欠失などの変異によって正常なタンパク質を産生する能力を失った非機能性DNA領域のことです。分子生物学では「遺伝子の化石」とも呼ばれます。
擬似遺伝子の成り立ちには主に3つの経路があります。
- 重複型擬似遺伝子:遺伝子重複によって生じたコピーが変異を蓄積して非機能化したもの(最も一般的)
- 処理型擬似遺伝子:mRNAが逆転写されてゲノムに挿入されたもの(イントロンや調節配列がなく、レトロ擬似遺伝子とも呼ぶ)
- 単一型(ユニタリー)擬似遺伝子:元々唯一の機能的コピーだった遺伝子が変異によって機能を失ったもの
ヒトゲノムには1万以上の擬似遺伝子が存在すると推定されています。例えばヒトのビタミンC合成に関わるGULO遺伝子は擬似遺伝子化しており、ヒトがビタミンCを食事から摂取しなければならない理由のひとつです。また、嗅覚受容体遺伝子の約60パーセントは擬似遺伝子であり、イヌなどの嗅覚が鋭い動物と比べてヒトの嗅覚が弱い理由とも関連しています。
近年の研究では、一部の擬似遺伝子がnon-coding RNAとして転写され、遺伝子発現調節に関与していることも明らかになっており、全くの「無用の産物」ではない場合もあることが分かっています。
使い方・例文
ヒトとチンパンジーの擬似遺伝子の位置を比較することで、共通祖先の時代に同じ遺伝子が機能を失ったことが確認でき、両者の進化的近縁関係を示す証拠のひとつとして用いられています。
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