マチエールとは?
まちえーる
マチエールとは、絵画や工芸において画材の質感・肌合いそのものを指すフランス語由来の美術用語です。
マチエール(matière)はフランス語で「素材」「物質」「質感」を意味し、日本の美術界では主に絵画作品における絵の具の盛り上がりや筆致の痕跡、表面の凹凸・光沢・ざらつきといった物質的な質感全般を指す言葉として定着しています。
油彩画では、絵の具を厚く盛るインパスト技法によって立体感のある表面を作り出したり、逆に薄く溶いてなめらかな肌を表現したりと、マチエールは作家の表現の個性を強く左右します。テンペラや日本画、版画においても、素地(支持体)の質感や顔料の粒子感がマチエールとして重要視されます。
マチエールが注目された背景には、20世紀以降の近代美術運動があります。セザンヌやゴッホが絵の具を積極的に「物質」として扱ったことで、それ以前の「なめらかさを美徳とする」古典的規範から解放され、マチエール自体が作品の主題となる道が開かれました。アンフォルメル(不定形芸術)など戦後の抽象表現では、マチエールこそが絵画の内実そのものとみなされることもあります。
現代では混合技法(ミクストメディア)の普及により、砂・布・樹脂など多様な素材を画面に組み込み、独自のマチエールを生み出す作家も多く見られます。
使い方・例文
ゴッホの作品を間近で見ると絵の具が波打つように盛り上がっており、このうねるような表面の質感がまさにマチエールの典型例です。画集と実物の印象が大きく異なる理由のひとつも、マチエールが写真では再現できないためです。
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